「日常点検って、どこをどう確認すればいいの?」「毎日やるべきことが多くて覚えられない」——トラックドライバーを始めたばかりの方や、転職を検討している方から、こんな声をよく聞きます。
実は、トラックの日常点検は法律で義務付けられた重要な作業です。そのため、正しい手順で確認することが、事故防止だけでなく法令遵守にも直結します。この記事では、ドライバーが毎日確認すべき10のポイントを、わかりやすく順番に解説します。
日常点検とは?法律上の義務を確認しよう
まず、日常点検の法的な位置づけを確認しておきましょう。
道路運送車両法第47条の2では、事業用自動車の使用者および運転者に対し、運行開始前の日常点検を実施する義務が明記されています。つまり、日常点検は「やったほうがいい」ではなく「やらなければならない」義務です。
また、点検の結果は日常点検表に記録し、1年以上保管することが推奨されています。さらに、点検で異常が見つかった場合は、速やかに運行管理者へ報告し、必要な整備を行うまで運行を見合わせる判断が求められます。
なお、点検を怠った場合は道路運送車両法違反となり、罰則の対象になる可能性もあります。そのため、毎日の点検を習慣として身につけることが、プロのドライバーとしての第一歩です。
日常点検の流れ:エンジン始動前と始動後に分けて行う
日常点検は、エンジン始動前とエンジン始動後の2段階に分けて行います。この順番を守ることで、効率よく漏れなく点検できます。
エンジン始動前の点検(車両周り)
ポイント① タイヤの状態を確認する
タイヤはトラックの安全走行を支える最も重要な部品のひとつです。そのため、毎日必ず確認する習慣をつけましょう。
確認すべき項目
- 空気圧:標準空気圧表示プレートを参考に、低すぎ・高すぎがないか確認します。スペアタイヤも忘れずチェックしましょう
- 亀裂・損傷:タイヤの接地面・側面に亀裂や損傷がないかを目視で確認します。また、金属片などの異物が刺さっていないかも確認しましょう
- 溝の深さ:スリップサイン(摩耗限度表示)が現れていないか確認します。スリップサインが出たタイヤは交換が必要です
なお、総重量8トン以上の大型トラックの場合は、ディスクホイールの取り付け状態のチェックも必要です。ナット・ボルトの破損・脱落・緩みがないか、点検ハンマーで叩いて音の違いで確認しましょう。
ポイント② ブレーキ装置の状態を確認する
ブレーキはトラック最重要の安全装置です。したがって、始動前にも目視・触覚で異常がないかチェックします。
確認すべき項目
- パーキングブレーキの引きしろが適切かどうか(大きすぎ・小さすぎはNG)
- ブレーキフルードの液量が適正範囲内にあるか
- ブレーキホース・パイプに亀裂・損傷・液漏れがないか
ポイント③ エンジンルームの液量を確認する
エンジンルームを開けて、各種液量を確認します。液量が不足していると、走行中に重大なトラブルにつながる可能性があるため、毎日の確認が欠かせません。
確認すべき項目
- エンジンオイル:オイルレベルゲージを抜いて、適正量の範囲内にあるか確認します
- 冷却水(クーラント):リザーバータンクの水量が適正範囲内にあるか確認します
- ウォッシャー液:タンクの液量を目視で確認します。特に冬場は凍結防止液が入っているかも確認しましょう
- バッテリー液量:バッテリーの液量が適正範囲内にあるか確認します(メンテナンスフリーバッテリーの場合は不要)
ポイント④ 灯火類・ウインカーの状態を確認する
ヘッドライト・ブレーキランプ・ウインカーなどの灯火類は、他のドライバーや歩行者への重要な信号です。そのため、球切れや汚れがないかを毎日確認しましょう。
確認すべき項目
- ヘッドライト(ロービーム・ハイビーム)の点灯確認
- ブレーキランプの点灯確認
- ウインカー(前後左右)の点滅確認
- バックランプの点灯確認
- ハザードランプの点滅確認
- 灯火類のレンズが汚れていないかの確認
ポイント⑤ ウィンドウ・ミラーの状態を確認する
視界の確保は安全運転の基本です。したがって、ウィンドウの汚れ・ひび割れ、ミラーの角度・汚れも毎日確認しましょう。
確認すべき項目
- フロントガラスに大きな傷・ひび割れがないか
- バックミラー・サイドミラーの角度が適切か
- ミラーに汚れ・破損がないか
- ワイパーのゴムが劣化していないか
エンジン始動後の点検
ポイント⑥ エンジンの状態を確認する
エンジンを始動したら、アイドリング中にエンジンの状態を確認します。
確認すべき項目
- エンジンのかかり具合に異常がないか
- アイドリング中に異音・異臭がないか
- エンジン警告灯などの警告ランプが点灯していないか
- エンジンを低速・加速させたときに異常がないか
ポイント⑦ ブレーキの効き具合を確認する
エンジン始動後、発進前にブレーキの効き具合を実際に踏んで確認します。
確認すべき項目
- ブレーキペダルの踏みしろが適切か(踏み込んだときの遊びが大きすぎ・小さすぎでないか)
- ブレーキの効き具合に左右差がないか
- エアブレーキ車の場合:ブレーキバルブからの異音・空気圧の上昇具合を確認
ポイント⑧ 排気ガスの色を確認する
排気ガスの色は、エンジンの状態を示す重要なサインです。そのため、発進前に後方から排気ガスの色を目視で確認しましょう。
色別の目安
- 無色〜薄い白色:正常な状態
- 黒煙:燃料の不完全燃焼の可能性。エンジンに異常がある可能性があります
- 白煙(濃い):冷却水がエンジン内に入り込んでいる可能性があります
- 青白い煙:エンジンオイルが燃焼している可能性があります
ポイント⑨ 警告灯・メーター類を確認する
メーターパネルの警告灯がすべて消えていることを確認します。また、燃料計・水温計・油圧計などのメーター類が正常な範囲を示しているかも確認しましょう。
確認すべき主な警告灯
- エンジン警告灯
- ABS警告灯
- バッテリー警告灯
- エアバッグ警告灯
- 油圧警告灯
なお、警告灯が点灯したまま運行することは非常に危険です。したがって、点灯している場合は必ず運行管理者に報告し、整備士に確認してもらいましょう。
ポイント⑩ 荷台・積み荷の状態を確認する
最後に、荷台と積み荷の状態を確認します。積み荷の状態は、走行中の安全性だけでなく、配送先でのトラブル防止にも直結します。
確認すべき項目
- 荷台の扉・あおりが確実に閉まっているか
- 積み荷が適切に固定されているか(荷崩れのリスクがないか)
- 積み荷の重量が最大積載量を超えていないか
- 冷凍・冷蔵車の場合は庫内温度が適正かどうか
- 危険物輸送の場合は標識・表示が適切に取り付けられているか
点検で異常を発見したらどうする?
点検中に異常を発見した場合、ドライバーは以下の手順を踏みます。
- 運行管理者へ即座に報告する:自己判断で運行を続けることは絶対にNGです
- 必要な整備が完了するまで運行を見合わせる:安全が確認されるまで出発しない
- 点検表に異常内容と処置を記録する:後日のトラブル防止・法令遵守のため
「少し気になるけど大丈夫だろう」という自己判断が、大きな事故につながることがあります。そのため、少しでも異常を感じたら、必ず報告する習慣をつけることが大切です。
日常点検をスムーズに行うためのコツ
毎日の点検を効率よく行うためのコツをご紹介します。
① チェックリストを活用する:点検表を用意して、項目を順番にチェックしていくことで、確認漏れを防げます。多くの会社では独自のチェックシートを用意していますので、それを活用しましょう。
② 点検の順番を固定する:「車両の前から時計回りに確認する」など、自分なりの順番を決めておくと、確認漏れが減ります。
③ 異音・異臭に敏感になる:日頃から自分のトラックの「普通の音・匂い」を把握しておくことで、異常を早期に発見しやすくなります。
まとめ
トラックの日常点検は、ドライバーにとって欠かせない毎日の習慣です。タイヤ・ブレーキ・灯火類・エンジンルーム・荷台など、10のポイントを順番に確認することで、安全な運行が確保できます。
「点検が面倒」と感じることもあるかもしれません。しかし、日常点検を怠ることが大きな事故や法令違反につながるリスクを考えると、毎日5〜10分の点検は非常に重要な時間です。プロのドライバーとして、日常点検を習慣として身につけていきましょう。
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