「若いドライバーが全然集まらない」「もっと幅広い年代から採用できないか」——そんな悩みを抱えている運送会社の採用担当者の方へ。
深刻なドライバー不足が続く中、60代・定年後の人材採用に力を入れる運送会社が急増しています。実は、60代のドライバーには若い世代にはない独自の強みがあり、職種によっては非常に即戦力になるケースも多いです。この記事では、60代・定年後のドライバー採用のメリット・向いている職種・注意点・受け入れ環境の整備まで、企業が知っておくべき情報をまとめました。
今なぜ60代・定年後の採用が注目されているのか
ドライバー不足の深刻化
トラックドライバーの有効求人倍率は2.51倍(2025年時点)と、全職種平均の約2倍の水準が続いています。若年層の入職者数がベテランの退職数を下回り続けているため、採用ターゲットを広げることは今や経営課題のひとつです。
そのような状況の中で、体力・経験・社会人としての責任感を兼ね備えた60代の人材が、改めて注目を集めています。実際に、道路貨物運送業の65歳以上の就業者比率は約10%に達しており、定年後の再就職先として運送業を選ぶ人が着実に増えています。
法律による高齢者雇用の後押し
2021年に改正された高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務として定められました。定年の引き上げ・継続雇用制度の整備・定年廃止などの措置が対象で、70歳まで働ける措置を実施済みの企業は約34%に達しています。そのため、60代の採用は単なる人手不足対策にとどまらず、法律の方向性とも合致した取り組みといえます。
60代・定年後ドライバーの強み
① 豊富な人生経験・社会人経験が安心感につながる
30〜40年の社会人経験を持つ60代は、時間を守る・報告・連絡・相談を確実に行う・安全意識が高いという点で、若手ドライバーより優れているケースが多いです。配送先の担当者や乗客からも「落ち着いていて信頼できる」という評価を受けやすく、顧客満足度の向上につながります。
② 丁寧で安定した運転技術
長年の運転経験から、無理な追い越し・急ブレーキ・急ハンドルといった危険な運転をしないドライバーが多いです。そのため、事故リスクの低さという点では若手より優れているケースもあります。実際に、ベテランドライバーの事故率は若手より低いというデータも存在しています。
③ 長距離・夜間より地場配送・昼間業務に適している
体力面を考慮すると、長距離・深夜便より地場配送・短距離・昼間シフトとの相性が良いです。こうした職種では、若手より60代のほうが適性があるケースも多くあります。
④ 定着率が高い傾向がある
若手ドライバーは「より良い条件の会社に転職」というケースがありますが、60代のドライバーは「この会社で長く安定して働きたい」という意識が強く、定着率が高い傾向があります。そのため、採用・育成コストの観点からも長期的なメリットがあります。
60代・定年後の方が活躍しやすい職種
① 送迎ドライバー(介護・医療・工場・スクール)
手積み手降ろしなし・荷物の重量負担なし・決まったルートを走るという点で、体力的な負担が少ない送迎ドライバーは60代に最も適した職種のひとつです。介護施設の利用者送迎・工場の従業員送迎・スクールバスなど、丁寧さ・安全意識・コミュニケーション力が評価されるため、60代の強みが活きます。
② タクシードライバー
タクシー業界の平均年齢は約60.7歳と非常に高く、65歳以上のドライバーが全体の約半数を占めています。つまりタクシー業界は、60代が最も自然に馴染める職種といえます。歩合制のため、自分のペースで稼ぎを調整できる点も、年金と組み合わせながら働きたい60代に向いています。
③ ルート配送ドライバー(小型・中型)
スーパー・薬局・コンビニなどへの食品・日用品のルート配送は、毎日同じルートを走るため覚えてしまえばストレスが少ない仕事です。台車や小型荷物を使った配送であれば体力的な負担も抑えられます。
④ 軽貨物ドライバー
普通免許で始められる軽貨物配送は、体力的な負担を抑えながら自分のペースで働けます。週3〜4日・午前中のみといった柔軟な勤務形態も多く、年金と組み合わせながら無理なく続けられるスタイルが選びやすい職種です。
企業が注意すべきポイント
① 健康管理の体制を強化する
60代の採用に際して最も重要なのが、健康管理の体制づくりです。法定の年1回の健康診断はもちろん、以下の取り組みも合わせて検討しましょう。
- 適齢診断の実施:65歳に達した日以後1年以内に1回、その後3年以内ごとに1回の実施が法律で義務付けられています
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)のスクリーニング検査:加齢とともにリスクが高まるSASは、居眠り運転の主要原因です
- 点呼時の体調確認の丁寧な実施:持病・服薬状況を事前に把握したうえで、点呼時に体調変化を見逃さない観察を心がけましょう
② 勤務形態を柔軟に設計する
60代の方に長く働き続けてもらうためには、体力に合わせた柔軟な勤務形態の設計が重要です。
- 週3〜5日のシフト制(フルタイムにこだわらない)
- 深夜・長距離便への無理な配置を避ける
- 年齢や体調に応じてルートや業務内容を見直せる仕組みをつくる
こうした柔軟性が「この会社なら長く続けられる」という安心感につながり、定着率の向上に直結します。
③ 高年齢雇用継続給付金を活用する
60〜65歳の従業員で、定年後の賃金が定年前の75%未満に低下した場合、雇用保険から「高年齢雇用継続給付金」が支給されます。賃金の最大15%相当が補填されるため、採用コストを抑えながら待遇を維持できます。したがって、ハローワークや社会保険労務士と連携して活用を検討しましょう。
④ デジタルツールへの対応サポートを用意する
デジタル点呼・配車アプリ・スマートフォンでの日報入力など、DX化が進む現場ではデジタルツールへの慣れが必要です。若手には当たり前のことも、60代には丁寧な説明が必要なケースがあります。そのため、わかりやすいマニュアルの作成・ITサポートを担当する社員の指名など、受け入れ環境の整備が定着率を左右します。
求人票・採用活動でのポイント
60代・定年後の方に応募してもらうためには、求人票の書き方も重要です。
効果的な表記の例
- 「60代活躍中・定年後の再就職歓迎」
- 「年齢不問・シニア歓迎」
- 「週3日〜OK・短時間勤務可」
- 「昼間のみ・深夜なし」
- 「体力に自信がなくても大丈夫(台車使用・手積みなし)」
こうした情報を求人票に明記するだけで、60代の方からの応募が増えるケースが多くあります。また、面接時には「どんな勤務形態が希望か」「健康状態・持病はあるか」を丁寧に確認し、双方が納得のいく働き方を設計することが長期定着のカギです。
まとめ
60代・定年後のドライバー採用は、深刻な人手不足の解消策として非常に有効な選択肢です。豊富な経験・安定した運転・高い定着率という強みを持つ一方で、健康管理の強化・柔軟な勤務設計・デジタルツールへのサポートという受け入れ体制の整備が必要です。
「若い人が採れないから」という消極的な理由だけでなく、「60代だからこそ活躍できる職場をつくる」という積極的な姿勢で取り組むことが、採用成功への近道です。
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