「バスってなんであんなに大回りするの?」「トラックが曲がるとき後ろが飛び出してくるのはなぜ?」——普通車を運転しているとき、ふとそんな疑問を持ったことはありませんか。
これは大型車特有の「内輪差」と「オーバーハング」という特性によるものです。大型車のドライバーになるなら絶対に理解しておくべき知識ですし、普通車ドライバーにとっても「大型車の近くでどう走ればいいか」がわかる大切な知識です。今回はこの2つを、できるだけわかりやすく解説します。
まず「内輪差」とは?
内輪差とは、車が曲がるときに前輪が通る軌道と後輪が通る軌道の差のことです。
どんな車でも、曲がるときに後輪は前輪より少し内側を通ります。普通車の場合この差は小さいのであまり意識しませんが、車体が長くなるほど内輪差は大きくなります。
大型トラックの内輪差は普通車の3倍以上にもなります。つまり、前輪がギリギリ通れても後輪が縁石や歩道に乗り上げてしまうことがあるわけです。
これが「大型車が左折するとき大回りをする理由」です。内側を小回りで曲がろうとすると、後輪が歩道を踏んだり、歩行者や自転車を巻き込む危険があるため、あえて大きく膨らんで曲がる必要があるのです。
バスの内輪差が「トラックより小さい」理由
「バスはトラックより長いのに、なぜ内輪差が小さいの?」と思う方もいるかもしれません。
実はここにバスとトラックの大きな構造上の違いがあります。
バスは運転席より後ろに前輪を配するため、同じ全長のトラックよりホイールベース(前輪と後輪の間の距離)が短くなるので内輪差も小さくなります。反面、運転席が前輪より突き出しているぶん、フロントオーバーハングに気をつけなければなりません。
バスに乗ったとき「運転席がバスの一番前にあるな」と感じた方も多いはずです。あの構造がホイールベースを短くして内輪差を小さくしているのです。
「オーバーハング」とは?
オーバーハングとは、タイヤの中心から前後に飛び出した車体の部分のことです。前輪より前に出ている部分を「フロントオーバーハング」、後輪より後ろに出ている部分を「リアオーバーハング」と呼びます。
普通車にも多少はありますが、トラック・バスのオーバーハングは格段に長いのが特徴です。
車種別リアオーバーハングの目安
| 車種 | リアオーバーハングの目安 |
|---|---|
| 小型トラック | 数十cm程度(ほぼ気にならない) |
| 中型トラック | 約60〜100cm |
| 大型トラック | 約100〜120cm |
| 路線バス | 約60〜80cm |
「リアオーバーハング」が危険な理由
リアオーバーハングが事故につながりやすいのは、曲がるときに後ろが外側へ大きく振れるからです。
たとえば右折するとき、前は右に向かっていても、後輪より後ろの部分(リアオーバーハング)は左側に大きくはみ出します。これをバスドライバーの間では俗に「ケツ振り」と呼んでいます。
ハンドルを左右に切ったとき、後輪を中心としてこの突き出ている部分が左右に振れることになります。路線バスの場合、約70cmも外に振れます。
つまり右折するとき、後ろが左の車線に70cmもはみ出すことがあるということです。このとき左の直進車線に車やバイクがいると接触してしまいます。
右折車線からの右折時に、対向車が途切れたからと言って左側直進車線の確認を怠って右折すると、リアオーバーハングがはみ出して直進車両と接触してしまうことがあります。
バス特有の注意点:フロントオーバーハングも要注意
先ほど「バスは内輪差が小さい」とお伝えしましたが、その代わりに気をつけなければならないのがフロントオーバーハングです。
バスは運転席が前輪よりさらに前に出ているため、曲がるときに運転席側(前方)が外側に大きく振れます。狭い交差点や駐車場への出入りでは、前方の電柱・看板・対向車にバスのフロント部分が接触するリスクがあります。
「バスの運転席は普通車感覚より外に出ている」という意識が、フロントオーバーハング事故を防ぐ第一歩です。
事故を防ぐための運転のコツ
① 左折は「大回り」が基本
内輪差が大きい大型車では、左折するときに普通車のような小回りは禁物です。後輪が縁石に乗り上げたり、巻き込み事故の原因になります。左折先の道幅・歩行者・自転車を確認したうえで、ゆっくり大回りで曲がることが基本です。
② 右折時は「左ミラーを必ず見る」
右折するとき、多くのドライバーは対向車ばかりに意識が向きがちです。しかし大型車は右折時にリアオーバーハングが左側にはみ出すため、左ミラーで左側直進車線の車・バイクを確認してから右折を開始することが必須です。
③ ハンドルは「ゆっくり・正確に」切る
普通車の感覚でいきなりハンドルを回すと内輪差により反対車線で信号待ちをしている車と接触するリスクがあります。逆にハンドルの切れ角を遅らせすぎると、フロントオーバーハングによって電柱・標識にミラーや車体がぶつかるおそれがあります。
ゆっくり・正確に、が大型車のハンドル操作の鉄則です。
④ 停車位置を意識する
交差点で停車する位置が悪いと、発進時のオーバーハングがより大きくなります。できるだけ直進状態で停車し、曲がる直前からハンドルを切り始めることで、オーバーハングの振れを最小限にできます。
⑤ バックカメラ・ミラーをフル活用する
リアオーバーハングは目視しにくい部分です。バックカメラの映像とサイドミラーを組み合わせて、後部の位置を常に把握する習慣をつけましょう。
普通車ドライバーも知っておくべきこと
これを読んでいる方の中には、大型車の近くを走る普通車ドライバーの方もいるかもしれません。大型車の特性を知っておくと、自分の身を守ることにもつながります。
- 大型車の左折時に内側に入り込まない(巻き込まれる危険)
- 大型車が右折するとき、左車線から追い抜こうとしない(リアオーバーハングに接触する危険)
- 大型車の真後ろに張り付いて走らない(急ブレーキ時の追突・オーバーハングへの接触)
大型車は「わざと大回りしている」「わざとゆっくり曲がっている」のではなく、安全に走るためにそうせざるを得ない特性があります。お互いの理解が、事故のない道路につながります。
まとめ
内輪差とオーバーハングは、大型車ドライバーが必ず身につけるべき基礎知識です。普通車の感覚のまま大型車を運転すると、思わぬ事故につながります。バス・トラックへの転職を考えている方は、この2つの特性をしっかり頭に入れておきましょう。
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